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台湾のおもてなし [台湾]

東京オリンピックの誘致成功の要因の一つが、日本固有の”おもてなし”にあるとしきりに喧伝されている。”おもてなし”の心は日本にしかない、他の国には真似ができない、といったことがまことしやかに言われる。確かに外国に行っても、また知りうる限り、日本ほどきめの細かいサービスを、いつでも、何処でも、誰でも、誰にでも、安定して提供してくれる国はないと思う。海外で”ホスピタリティを感じる”とか”ホスピタリティが高い”と言われるサービスを体験しても、日本だったら物足りないと感じるくらい日本のサービスの質の良さは桁違いだ。しかし、商用ベースに乗っかった”おもてなし”とか”ホスピタリティ”と、本当の意味の「心からの思いやり」を同じものとして捉えるには違和感がある。テレビや雑誌などでで連呼される”おもてなし”とか”ホスピタリティ”という言葉には、サービスの対価としての”お金”の臭いを感じてしまう。ただ、高いサービスの対価にはお金がかかるのは当たり前だと思っている。しかし、日本だけじゃない、台湾だって凄いのだ。台湾に行っていつも思うのは、とにかくみんな親切で優しいこと。商売だから優しいに決まっていることも十分承知しているが、見返りを求めない純粋な優しさを感じる場面に多く遭遇する。台湾では普通に、そこいらを歩いている人々が親切だ。ホテルの従業員やタクシーの運転手に美味しい飯を喰えるところを聞くと、あっというまに10箇所くらいは教えてくれる。台湾と日本以外の国だったら教えてもらったところで警戒してしまうところだが、この国ではそんな心配はいらない。

空港からバスでホテルの近くまで行ったが、ホテルの場所が分からずタクシーを止めてホテルまで行こうと思った。しかし、タクシーが止まってくれない。止まってくれたタクシーに行き先の地図を見せたのだが断られてしまった。すると、若い女性と男性が近寄って来て、どこに行きたいのかを私に聞き、彼らのスマホで地図を調べ、ホテルの位置を確認してからタクシーを止め、運転手に私の行きたい場所を説明してくれた。若い女性と男性は大学生で、雨の中、自分たちのタクシーさえ捕まらないにもかかわらず。。。

夜遅い時間に小さな食堂で”魯肉飯”を頼んだのだが、もう魯肉飯が品切れだった。その店の魯肉飯は抜群に美味く、台北のその店で魯肉飯を食べるのが何よりの楽しみだった。残念だが無いものは仕方が無い。代わりに鶏肉飯とおかずを二品頼んだ。しかし、出てきた鶏肉飯には、いつもは無いメンマと漬物が乗っかっている。魯肉飯が無くなってしまったお詫びにサービスだという。しかも、しばらくすると小さいお茶碗に入った魯肉飯を出してくれた。出てきた魯肉飯はいつも食べる魯肉飯の1/3くらいしかない。店のおばさんが言うには魯肉飯用の煮込んだひき肉の残りをかき集めて、小さな魯肉飯を一杯作ってくれたのだ。支払いの時、魯肉飯の代金を加えてお金を払おうとしたのだが頑として受け取らなかった。お店は儲かってるんだろうなー。

タクシーで市内のホテルから空港まで行った時、空港に着いた途端にタクシーの運転手が運転席を降りてどこかに行ってしまった。こっちはまだ運賃を支払っていないのだ。「ありゃりゃ」と思っていると、運転手は空港ロビーの中から荷物用のカートを押してくるではないか。彼は私の荷物(たいした量ではない)をカートに積んで、しかもロビーの中まで運んでくれた。彼の気持ちが嬉しかった私は手持ちの台湾元を全部渡したのだが、いらないと言う。そういう訳にはいかないので、渡そうとするが受け取ってもらえない。こっちも意地になって、運転手の胸ポケットにお金を突っ込んで逃げるようにチェックインカウンターに並んだのだが、彼はずっと私のチェックインが終わるのをを待っていた。そして、私が出国ゲートに消えるまでずっと見送ってくれた。止めっぱなしのタクシー大丈夫だったのだろうか。

台北の小さなビジネスホテルに止まった時、ミルクティーが飲みたくなってホテルの冷蔵庫を探したが無い。ホテル1階のロビーの自動販売機を見たがタピオカミルクティーしかなかった。手に入らないと思うと余計に飲みたくなる。近くにコンビニが無いかフロントで聞くと、歩いて5分位のところにあると教えてくれた。コンビニまで買いに行こうと思ったが、物凄い雨が降っていたので急にコンビニに行くのが億劫になった。仕方が無いのでホテルのルームサービスでもいいからミルクティーが無いか聞いてみたが、小さいビジネスホテルなのでルームサービス自体がなかった。どうしようかなー、と悩んでいるとフロントにいた従業員の一人が、「ロビーの椅子に座っててください」と言うので座って10分くらい待っていると、従業員が戻って来た。彼の手にはミルクティーが、、、彼は雨の中コンビニまでミルクティーを買いに行ってくれたのだった。感謝の気持ちを込めて多めのお札でお金を旗うと、その従業員は律儀にもお釣りを持って再び現れた。私が「気持ちです」と言うと、その従業員は深々と頭を下げてお礼を言うのだった。いやいやいや、お礼を言うのはこっちの方だって。

以前も書いたが、私が適当な事を言ってバスに乗せてもらってしまったために、見ず知らずの人たちが私を永康街という場所までバスで(しかも、乗り換えあり!)送り届けてくれた。とても遠回りだったが。。。

日本の隣にも、素晴らしいおもてなしの心を持つ国があることを世界中に知ってもらいたい。
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香港・マカオ3泊4日 (1) [台湾]

もう、ずいぶん昔のことになるが、生まれて2度目の海外旅行は香港とマカオだった。前年、友人達と初海外旅行の王道ハワイに行ったのだが、時差、6時間を超える飛行時間、食生活のギャップにやられ、「もう、海外旅行は嫌だ」と音を上げたら、友人が、「じゃー、これはどうだ」と持ってきたツアーのパンフレットには”ホンコン”と書いてあった。香港という名前は知っていたが、どこにあるのか知らなかった。当時、香港はまだイギリスの植民地で、友人が言うには、時差は1時間しかない上、ハワイよりも近いらしかった。しかも、物価が日本に比べて安く、食事は中華料理だから美味いと言う。特に北京ダックと上海蟹というものがあって美味いらしかった。その当時、今のようにインターネットなど無い時代で友人が持っていたガイドブックが頼りだった。ガイドブックのページを開くと国自体が美味しそうに見えた。前回一緒にハワイに行った友人二人にも話をして、秋に行くことに決まった。香港までの飛行機は直行便ではなく、台湾でトランジットがあった。おおっ、香港とマカオだけではなく、台湾にも行けるのかと思って、えらく興奮した。しかし、”トランジット”という言葉の意味がわからない。香港で乗り換えとは飛行機が代わるのか?乗りっぱなしじゃダメなのか?台湾で一回降りて台湾料理を食べる余裕はあるのか?と友人に聞いてもよくわからない。しかし、どうせみんなで一緒に行動するのだからいいや、と理解することを諦めた。旅行当日、成田空港から出発し台湾に着いた。当時、台湾桃園国際空港は蒋介石国際空港と言っていた。蒋介石という名前は世界史の授業で聞いたことがあったが、台湾に関係する人だということをすっかり忘れていた。航空会社は覚えていないが成田発で台湾経由だったことを考えるとキャセイパシフィックだったのだろう。空港での乗り継ぎのために、同じ飛行機の乗客と一緒にゾロゾロと次の乗り継ぎゲートに向かって歩いた。歩きながら見るものがすべて珍しいので、友人の一人と「何だこれ」を連発してはしゃいでいた。その時、一緒にはしゃいでいた友人が「自動販売機にコカコーラがある」と言って自動販売機に駆け寄った。私も一緒に自動販売機のところに行ったが、自動販売機自体は日本のものと変わらない。違うのは缶のラベルが漢字なのと通貨、通貨は元だった。当然、元などは持っていない。自動販売機に駆け寄った友人は好奇心の強い男で、自分の財布から日本の10円玉を出して自動販売機に入れてみたが戻ってきてしまう。そして、50円玉、100円玉と入れてみたが、やはり戻ってくる。最後に500円玉を入れると戻ってこない。やった!と思ってコーラのボタンを押したがコーラは出てこない。友人が「500円玉持ってないか?」と聞くので自分の財布を見ると500円玉があった。私が500円玉を入れると、コーラのボタンが点灯した。ボタンを押すと自動販売機からコーラが出てきた。友人と二人大喜びで「やったな。俺達やれば出来るんだよ」などと互いに称賛しあった。そして、体全体からやり遂げた感を出しながら、コーラを手に別の二人の友人のところに行って、「台湾の自動販売機に500円玉2枚入れてコーラを出したぞ!」と得意げに自慢した。すると友人は、「えっ、500円玉2枚って1000円だろ。缶コーラ1個だぜ。バカじゃねーの」と言って、あっさり切り捨てられた。ううっ、そう言えば1000円も使ったんだ。興奮して気が付かなかった。私は子供の頃から一つのことを考えると、他のことに想いが及ばなくなる癖がある。一緒にコーラを出した友人もそうだった。友人にそう言われて急に冷めてしまい、乗り継ぎの飛行機に乗って香港に向かった。あれからずいぶんと年月を経たたが、今もその性格は変わらない。その性格は大好きだ。(続く)
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どこに行きたいのですか? [台湾]

台湾は良い国だ。ご飯は美味しいし、人々は優しくて親切。街中で立ち止まって日本語のガイドブックを開こうものなら、「どこに行きたいのですか?」と素敵な笑顔と一生懸命の日本語で声をかけてくれる。一度、バスの停留所で複雑怪奇な台北のバス路線図を覗き込んでいたら、お婆さんに台湾語で、「どこに行きたいの?」(恐らく)と聞かれた。おいらはとっさに「ヨンカンチェ(永康街)」と唯一台湾語で発音できる地名を言ってしまった。すると、そのお婆さんはバス路線図とにらめっこして、台湾語で「こりゃー、乗り換えないと行けないねー。よし、私に任しときな!」(多分)と言って、停留所に向かってくるバスを止め、運転手さんに「この子が永康街に行きたいと言っているので、乗り換える停留所で降ろしてやってくれ」(きっと)と台湾語で頼んだ。別にバスに乗りたい訳でも、永康街に行きたい訳でもないのに。。。バスの運転手さんは私を手招きして乗せてくれた。バスは走り出してしまい、私はお婆さんに手を振った。相変わらず自分の置かれている状況が良く分からないままだった。そもそも、バスの料金がいくらかわからず、持っていた硬貨を全部出して困っていたら、一番前の席に座っていたおじさんが必要な分だけ選んでくれて支払いは完了。そして、つり革に捕まって、「おいらはいったいどこに行くんだろう」とバスの中に貼ってある路線図を見ていると、隣にいた女性が綺麗な日本語で「どこに行きたいのですか?」と聞いてくれたので、「永康街に行きたいんですが」と言うと、「どこかで、乗り換えないと行けませんね」と親身に路線図を見てくれている。すると、またまた、流暢な日本語で「どこに行きたいんですか?」と言う声がするので、後ろを振り返ると、おじいさんが私に満面の笑顔を向けている。「永康街に行きたいのです」と私が言うと、おじいさんは「私が降りるところで永康街行きのバスに乗り換えができます。私が乗り換えるバスに乗せてあげます」と頼もしい事を言ってくれた。しばらくして、私はおじいさんと一緒にバスを降りて、後に付いて近くの停留所まで歩いた。バスが来るまで話していたが、おじいさんは戦前の小学校では日本語の授業があったので日本語を勉強したらしい。戦後は日本の会社で働いていたこともあるそうで、とても日本語が上手だった。私が乗り換えるバスが来て、おじいさんはバスを止めた。私を乗せた後、台湾語で運転手さんに「この人を永康街で降ろしてほしい」(かなりの確率で)と頼んでくれている。バスの運転手さんは台湾語で「任せておきなさい」(確信はないが)と言っている。おじいさん、ありがとうと私はおじいさんに手を振ってから頭を下げた。私が座席に座ると後ろの方に座っていた中年の女性から「どこに行きたいのですか?」と英語で聞かれて、「永康街」と答えると、停留所に着いたら教えてあげるから大丈夫だと言ってくれた。私は涙が出そうになっていた。だって、そうだろう。見ず知らずの観光客がいい加減な事を言ったにもかかわらず、周囲の人が私を目的地に送り届けようと一生懸命になってくれているのだ。なんでみんなこんな優しいんだろう。そして、中年の女性が押したブザーの音で我に返った。中年の女性が、永康街は次だよと教えてくれた。私は大きな声で、中年の女性と運転手さんにお礼を言ってバスを降りた。ついに到着した。ちょっと時間はかかったが、ようやく永康街に着いた。遠回りがこんんなに楽しかったことはない。ところで、おいらは永康街に何をしに来たんだっけ?まー、いっか。行くつもりはなかったけど鼎泰豐で小籠包でも食べよう。今日もいい天気だー。
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